本記事では元保育士の視点と3兄弟(5歳、1歳、妊娠中)の母の視点を織り交ぜ、気ままに絵本をレビューしています。

 

 

『ねずみくんとブランコ』

なかえよしお・文

上野紀子・絵

ポプラ社

1983年出版

 

 

いつもは元保育士としての感想と、母親としての感想、両方を練り込んで感想をつづっているのですが、今日はほぼ母親目線での感想になっています。

 

  • ざっくりあらすじ

ひよこさんが両親に作ってもらったブランコに乗っていると、「ぼくもブランコ乗りたいな」と次々に動物がやってきます。みんな「重くて乗れないわ」とお断りするひよこさんですが、「ねずみくんは乗れるかもしれないわ」とねずみくんは一緒にブランコにのせてあげます。

すると、いじわるねこくんが現れてブランコを横取りしてしまいます。

ねこくん、いじわるはだめですよ。いじわるする子は・・・。

 

 

 

 

こちらの『ねずみくんとブランコ』は、『ねずみくんのチョッキ』で有名な“ねずみくんの絵本”シリーズの絵本です。

 

『ねずみくんのチョッキ』といえばだいたいどの保育園・幼稚園・児童館等に置いてあるのではないでしょうか。

 

非常に有名な絵本ですよね。

 

 

一方、こちらの『ねずみくんとブランコ』は『ねずみくんのチョッキ』に比べるとマイナーなのですが、『ねずみくんのチョッキ』のように次々に動物が登場する展開になっています。

 

ある日、ひよこさんがブランコで楽しそうに遊んでいました。

 

このブランコはひよこさんのお父さんとお母さんが作ってくれた特別なものなんだそうです。

 

動物たちが次々にやってきて「ぼくもブランコ乗りたいな」と言いますが、ひよこさんはその度に

 

「ぞうさんは重くて乗れないわ」

「ライオンさんは重くて乗れないわ」

「あしかさんは重くて乗れないわ」

「ぶたさんは重くて乗れないわ」

 

などと断っていきます。

 

ねずみくんが来たときには「ねずみくんなら乗れるかもしれないわ」と言って一緒にブランコに乗せてあげます。

 

すると、いじわるねこくん登場!

 

「やい、ぼくにもブランコ乗せろ!」

 

ひよこさんが「ねこくんは重いから乗れないわ」と言うのも聞かず、 「なにお、なまいきな。降りろ!」 と、ひよこさんとねずみくんを突き飛ばし、ブランコを横取りしてしまいました。

 

「乗れるじゃないか。そこのけ、そこのけ(そこをどけ)」

 

得意になって勢いよくブランコをこぐねこくん。

 

「とりさんのお父さんに怒られますよ」という忠告も聞きません。

 

すると、あれ?ねこくんから見えるみんながどんどん小さくなって…。

 

ねこくんのブランコは空高く飛んでいってしまいました。

 

実はこのブランコ、ひよこさんのお父さんとお母さんがお空で引っ張っていたんですね。

 

「助けて〜」

「おろしてよ〜。もういじわるしないから」

 

ねこくんは泣いて許しを請います。

 

「はいはい、おろしてあげますよぉ」 ドスーン!

 

ねこくんはブランコから降ろしてはもらえましたが、さっき自分が無理矢理ひよこさんとねずみくんをブランコから突き飛ばしたときのように尻餅をつき、 「だから怒られるって言ったのに」という一言と、ねずみくんとひよこさんの(もう、ねこくんは。しょうがないなぁ)というような表情で締め括られています。

 

 

私はこの“ねずみくんの絵本シリーズ”、絵本のデザイン自体は好きなんです。

 

白地のページに白黒の鉛筆画。

 

ページのぐるりを緑で囲っていて、シンプルながらも(シンプルだからこそ)ねずみくんや動物たちの表情や仕草に注目して見ることができます。

 

この“ねずみくんの絵本シリーズ”が人気の理由が分かる気がします。

 

 

ただ…、この『ねずみくんとブランコ』の内容はどうでしょうか。

 

いまの時代にはそぐわないかも…。

 

というのが素直な感想でした。

 

1983年出版ということで、その頃にはこんな風にシンプルに「悪いことをしたら天罰がくだりますよ」というような教えをお母さんお父さん先生たちは子どもに伝えていたのかもしれません。

 

しかし、現代ではどうでしょう。

 

児童館などに行くとおもちゃはみんな譲り合いが基本です。

 

自分の子どもがおもちゃで遊んでいて、いくら子どもがそのおもちゃに没頭していたとしても、他の子がそばに来たら自分の子に対して

 

「お友だちが来たからお友だちに貸してあげようね」

 

「順番こしようね」

 

などと言って後から来た子におもちゃを譲るか、(その子がそれほどそのおもちゃに興味がなさそうだとしても)

 

もしくは、 「お友だちも一緒に遊ぼう」 と言ってその子も一緒に同じおもちゃで遊ぶよう誘ってみるか。

 

だいたいのお母さんがこれらの行動を取るかと思います。

 

これは、“子どもに協調性を大事にさせるため”、“子ども同士仲良く遊んでほしいから”、という理由もありますが、一方で“相手のお母さんへの友好的であることへのアピール”や、“無用な争いを避けるため”という母親・父親の都合も少なからず含まれている場合がほとんどかと思います(少なくとも私はそうです) 。

 

 

子どもが何かに集中して遊ぶのってすごく大事なことです。

 

もし、一人で遊ぶタイプのおもちゃだった場合や子どもがどうしても一人で集中して遊びたがった場合、 「今遊び始めたばかりだから、もう少し待ってね」 相手の子にこう言って少しがまんしてもらうのも本来ならアリです。

 

(また、私の勤めていた保育所ではこのように声かけすることも多々ありました)

 

しかし、児童館でこのように“自分の子ではなく相手の子に我慢させる”親はほとんど見かけません。

 

それは、児童館がみんなの場所であり、児童館のおもちゃはみんなのおもちゃだから。

 

子どもを一人で集中して遊ばせたかったら自宅で遊ばせればいいことだし、みんな譲り合って遊ぶからこそお母さんお父さんたちはみんな児童館で平和に子どもを遊ばせることができるというわけです。

 

他者との関わりによって、そんな“協調性”や“譲り合い”を学べるのも児童館の魅力であるとも言えます。

 

 

では、絵本の内容と照らし合わせて見てみましょう。

 

この、『ねずみくんとブランコ』では、ひよこさんがお父さんとお母さんに作ってもらったという特別なブランコで遊んでいると「ぼくも乗りたいなぁ」と次々と動物たちがやってきます。

 

みんな、ひよこさんが乗っているブランコを羨ましそうに眺めていますね。

 

ですが、ひよこさんは「重くて乗れないわ」と次々に断っていきます。

 

まずこの場面で違和感を感じてしまいます。

 

ブランコというと、普通は公園にあるブランコを思い浮かべますよね。

 

公園にあるもの=みんなで使う遊具です。 小さな子どもの場合、なかなか“自分のもの”と“他人のもの”の区別がつきにくく、ごく軽く「貸して貸して〜」なんて言うのは日常のお話。

 

そして、ひよこさんは色んな動物がやってくる場所(=公共の場。公園や広場と予想)で自分専用のブランコで遊んでいました。

 

そんな公共の場所にあるブランコです。

 

この絵本に出てくる動物たちもひよこさんのブランコを“みんなの遊具”だと認識して「僕も乗りたいなぁ」と言った可能性が高いと想像できます。

 

「あなたは重くて乗れないわ」と断られた動物たち、ショックだっただろうな。。

 

ひよこさんのこと、「いじわるなやつ」って思った動物もいるかもしれません。

 

 

そんな特別なブランコ、他の子が貸してほしくなるのは容易に想像できるわけで、もし誰にも貸したくないんだったら自宅の庭で遊べばいいのになぁ。

 

断る前提なのに何も見せびらかすかのようにみんなの前で遊ばなくても。

 

 

これが私の感想です。

 

 

以前、大型ショッピングモールのおもちゃ屋さんで当事4歳の長男に最新の変身ベルトを買い与えたことがありました。

 

息子は嬉しくてすぐに変身ベルトを装着し得意気な笑み。

 

そのままキッズスペースに行くと、すぐに何人かの子どもがやってきて「貸して貸して」が始まりました。

 

息子より大きいお兄ちゃんの中には息子の装着しているベルトを無理矢理外して自分でつけてしまう子もいました。

 

何人かのお母さんはすぐにこちらに駆け寄り「だめよ」と制止してくれましたが、座ったまま見ているだけだったりお母さん同士でおしゃべりし気づかないお母さんもいました。

 

私はおもちゃを返してもらい、すぐに息子を連れてキッズスペースを後にしたのでした。

 

 

そこで私が思ったことは、

 

「見せびらかすようなことはしてはいけない」

 

「貸したくないおもちゃはおうちで使わせる」

 

ということです。

 

 

目新しいおもちゃに子どもたちが興味を持つことはごく自然なこと。

 

何も責められないし、貸さないのはかわいそう。

 

でも貸して壊されたらたまったものじゃない。

 

じゃあ、やっぱり私がもっと気を遣うべきだったな。

 

貸してほしかったのに断っちゃった子に悪いことしたな。

 

なんて反省したものです。

 

 

この『ねずみくんとブランコ』も同じではないでしょうか。

 

ひよこさんのお父さんとお母さんは、すぐ上空でひよこさんと動物たちの様子を見ていた訳ですが、わが子がお友だちにブランコを貸さない状態が続いても何も声を掛けることはありません。

 

2.3匹の動物に断ったあたりでひよこさんに「おうちで遊ぼうか」と声を掛けても良さそうですが…。

 

 

さらにたちが悪いのは、ひよこさんがねずみくんに“だけ”ブランコを貸していることです。

 

ブランコの荷重制限をクリアしたねずみくんがブランコに乗るのを許可された。

 

一見真っ当な理由ですが、今まで断られてきた他の動物たちはどう感じるでしょうか。

 

「○○ちゃんはいいけどあなたはダメ!」

 

ひよこさんがねずみくんと特別仲が良かったのだとしても、そんなこと言われた子どものことを想像すると悲しくなっちゃいます 😢

 

(この後ねこくんが現れた場面で他の動物たちも様子を見ている描写がありますので、断られた動物たちはこのひよこさんとねずみくんの様子を近くで見ているものと思われます)

 

もちろんこの場面もひよこさんの両親は見ているだけでスルー。

 

きっと多くの親御さんはわが子のこのような場面に遭遇した場合

 

「そんないじわる言わないでみんなで仲良く遊びなさい」

 

とわが子を注意するのではないでしょうか。

 

 

ひよこさんとねずみくんが楽しそうにブランコに乗っていると、いじわるねこくんが登場。

 

ひよこさんとねずみくんはねこくんに突き飛ばされ、ブランコは奪われてしまいました。

 

悪態をつくねこくんに対して、ブランコを引っ張っていたひよこさんのお父さんとお母さんが急に存在感を表し、ねこくんをブランコごと空高く飛ばして制裁を加えます。

 

泣いて許しを乞うねこくんにひよこさんのお父さんとお母さんの制裁は止まりません。

 

「おろしてよぉ〜。もうしないから〜」

 

と泣き叫ぶねこくんに対して、

 

「はいはい、おろしますよぉ」

 

と言って、ドスーン!と尻餅をつかせて降ろすひよこさんのお父さんとお母さん。

 

無表情で淡々と制裁をこなすひよこさんのお父さんとお母さんに恐怖を感じずにはいられません。

 

何でしょう。ここでも違和感が。

 

ねこくんはどうやら近所でも有名ないじわる者のようですが、そんなねこくんが出没する場所でわざわざねこくんにターゲットにされそうなブランコで遊ばせるのってどうなんでしょう。

 

もちろんいじわるをしたねこくんが悪いのですが、例えば有名なスリが出没する場所に高そうな宝石を身につけて行くかのような危機感のなさ。

 

「こちらは何も悪いことをしていないんだから堂々としていればいい」のは分かりますが、予想できる危険回避は普通しますよね。

 

特に子育てにあたっては、他の子・保護者とのトラブルを避けるため神経を尖らしている保護者の方が多いであろう現代。

 

この絵本のひよこさんとひよこさんのお父さんお母さんの行動には違和感を感じずにはいられません。

 

もし自分の子が他人の子にいじわるをされたとしても、ひよこさんのお父さんとお母さんのように他人の子に鉄拳制裁を加えるなんてことはまず考えられませんし。

 

 

上記の様々な点から、私はこの『ねずみくんとブランコ』を読んでいて違和感の連続でした。

 

(「絵本なんだからそこまで考えなくても」という意見は一旦ナシにした今回の絵本レビューでした)

 

とはいえ、「悪いことをしたら罰が当たる」このコンセプトはすごくいいと思うんです。

 

「いじめっこもみんな仲良く」

「いじわるされても許してあげましょう」

 

という絵本ばかりになっても気持ち悪いですし…。

 

なので、「悪いことをしたら罰が当たる」のコンセプトでもっと違った内容の絵本があればぜひ息子たちに読んであげたいなぁと感じました。

 

 

それでは今日の絵本紹介はここまで。

 

本日も長文レビューにお付きあいいただきありがとうございました😃

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