『最愛の子』は中国で実際に起きた誘拐事件をめぐる誘拐された家族と誘拐した家族(実際には夫が誘拐し妻は誘拐の事実を知らず3年間育てた)の物語です。この映画を見るまで、

中国では誘拐が多いことや、小学生の登下校は親や祖父母が必ず付き添う(誘拐防止のため)ということは知っていたのですが、自分の認識がどれだけ薄っぺらいものか思い知り愕然とし、観終わった後は中国より圧倒的に誘拐が少ない日本に住んでいるとはいえ自分の子どもたちを一人で外出させることが恐ろしくなってしまう今作。


日本で誘拐と言えば身代金目当てのイメージがありますが、中国でのそれは全く異なります。

目的は臓器売買、人身売買、身体を不自由にさせた上での路上での物乞いの強要などなど、、、

以前は誘拐犯は罰せられても誘拐した子どもや女性を買った人間への罰則はなかったようで、この『最愛の子』の反響の大きさから買った人間への罰則も定まったようです。現在中国では毎年20万もの子どもたちが誘拐され、ほとんどの場合誘拐された子が家族のもとに帰ってくることはないそうです。


『最愛の子』で3歳の息子を誘拐された元夫婦(元妻は現在別の男性と結婚している)は深圳に住んでいます。深圳といえばこの元夫婦のように農村から出稼ぎに来ている夫婦が多く、それにしたがい放置児も多いため誘拐犯に狙われやすいという背景があるようです。


私がこの『最愛の子』でひとつどうしても納得のいかないことは、この元夫婦がどうして3歳の息子を放置したのか。

 

3歳の息子ポンポンは父親に引き取られ、母親は週に1度ポンポンに会いにやってくるのですが、父親の方はネットカフェで働いており仕事中ずっと息子の面倒を見るわけにもいかないのでポンポンを近所の子どもたちと遊ばせるのが日常のようです。

3歳の子どもですから、気が逸れてちょっと目を離した隙にどこかへ行ってしまうことはよくあります。

また、同じ年の子がそれに気づいて制止できるかというとほぼ不可能。ポンポンも例外ではなく、友達と遊んでいたところを母親(お金持ちの男性と再婚しており高級車に乗っている)の車を見かけ1人追いかけて行ってしまいます。

 

ポンポンは母親に気づかれることなく、母親の車が遠ざかったところで誘拐されてしまいます。

実はこの時ポンポンが自分の車を追いかけてきていることに気づいていたがイライラしていたため無視したと後になって懺悔する母親。しかしですよ、いくらイライラしていたからって走って追いかけてくる3歳の子どもを無視して車で走り去ります?!

中国、特に深圳では誘拐が多いことは知っていたはずだし、誘拐じゃなくても交通事故に遭うかもしれない、それに3歳の子どもですからたとえ近所だとしても一人で家に帰れないかもしれないですよね。

なのに3歳の息子を置いて行っちゃったんです。映画を見ている瞬間はこの点が同じ母親として本当に理解できませんでした。

 

しかし、見終わった後あれこれ考えていると、この母親レベルじゃなくても子育てって気が緩む瞬間が確かにあるんですよね…。

あとから「なんで私もっと気をつけなかったんだろう」「もっと私がちゃんとしてれば」って自問自答と自責の連続です。

この母親も自分の行動に自責の念を感じ、再婚相手の男性とは離婚、自分のすべてを投げうってでも今度こそ息子を守ろうとします。

3歳の子を置き去りにした彼女の行動は理解できませんが、その後の行動は自分に置き換えて想像してしまい本当に胸が締め付けられました。


物語の後半ではヴィッキー・チャオ扮する“誘拐した側である育ての母親”がポンポンやもう一人の子ども(3歳ぐらいのこの女の子も今は亡き夫が誘拐してきたようです)を取り戻そうと奮闘するのですが、こちらの女性には嫌悪感を抱かずにはいられません。

(レビューを見ていると共感したという意見も多々ありましたが)

 

いくら自分が実の子どもとして育ててきたからと言え、誘拐してきた子どもだという事実が明らかになれば本来の両親のところに帰すのは当然。それを弁護士を雇って取り戻そうとするなんて、あなたが子どもを愛しているのなら本当の両親の子どもへの愛情も理解できるはず。それなのにそこのところは無視してとにかく自分のもとに連れ戻したい一心のように感じました。

しかし、彼女には最後の最後で苦渋の決断を迫られることになります。どうしたのかなぁ…。


さて、『最愛の子』に引き込まれたのは俳優陣の演技力や内容以外に音楽やカメラワークも効果的であったこと、また中国の誘拐事件にフォーカスを当てるにあたって切っても切り離せない“一人っ子政策”の問題も浮き彫りになっていることです。『最愛の子』を観た後はネットで中国の誘拐問題や一人っ子政策について夢中で調べることとなり、知っているようで知らない中国を知る貴重なきっかけとなりました。


俳優陣の演技力が光る『最愛の子』ですが、主役メンバーの演技もさることながら刑事役の余皑磊さんもとっても良かったですね。『最愛の子』では渋い役柄ですが、ファン・ビンビン主演の『武則天-The Empress-』では李義府(李猫)を演じていました。全く異なる役柄ですがどちらの役も見事に演じられていました。


観終わった後もしばらくあれこれ考えさせられる『最愛の子』絶対におすすめです!

 

 

 

『最愛の子』
中国語題:『親愛的』
監督:ピーター・チャン(陳可辛)(「ウォーロード/男たちの誓い」ほか)
脚本:チャン・ジー
出演者:ヴィッキー・チャオ(趙薇)(「レッドクリフ」「ムーラン」)、ホアン・ボー(黄渤)
公開:2014年(中国)、2016年(日本)
上映時間:133分
製作国:中国

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